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墨田区立二葉小学校(2007年実施)

第1回二葉小学校訪問「設計図発表会」2007年6月22日(金)

両国国技館もほど近い二葉小学校に今回初めて訪問しました。
二葉小学校では、4年生の総合学習の時間を使い、アサザ基金によるビオトープ造成のための授業を受けています。 当社はアサザ基金の方より、本件につきご案内いただき途中参加することとなりました。

今日はビオトープ設計図の発表会。クラスごとに全部で3クラス発表を行うようです。



今回驚いたのは、クラスによって考えてきたビオトープがおもしろいほどバラバラで、個性が出ていたことです。

1組はヤゴとメダカが共存出来る池を目指し、池の中に入れる土を三角形にする工夫を加えていました。土を三角形にすることで、浅瀬でくらす魚と深いところでくらす魚の両方が同じ池でくらすことが出来るのです。



2組は、いろんなトンボに池に来てほしいとの願いを込めて、トンボが卵を産むために必要な水草が育つまで、割り箸を池の土に入れ、卵を産みやすいように角度にまで気を配った設計図を発表。



3組は「オアシス二葉」と池に名前を付け、メダカが食べられないように、メダカを食べる生き物と食べない生き物に池を分ける案を考えました。また、多くの生き物が足を運んでくれるように、ヒヤシンスや七草、スズナなど様々な植物を加えることを提案。



印象的だったのは、どのクラスの子どもたちも思い思いの池を堂々と発表している様子です。 発表後にアサザ基金の飯島さんがそれぞれのクラスに良かった点や改善点をアドバイスすると、子どもたちはその言葉に一生懸命耳を傾けていました。

発表会終了後、先生方に子どもの様子をうかがうと、発表前はどのクラスの子どもたちも自分たちが1番だと自信満々だったのが、他のクラスの工夫した部分に感嘆し、目をキラキラさせながら「また考え直さなきゃ」と漏らしていたようです。


次回は再来週の7月3日。学校周辺の公園を探索して、どんな生き物が学校の周りに住んでいるのかを実際子どもの目で観察します。
また子どものいろいろな発見に出会えそうです。



第2回二葉小学校訪問「周辺地域探索『親水公園』」2007年7月3日(火)

前回のビオトープ設計図の授業を踏まえ、今回は周辺探索の授業が行われました。この日はあいにくの曇り空でしたが、前日の天気予報ははずれ、何とか雨も降らず、無事決行となりました。



今回の探索の目的は、周辺地域に住む生き物を知り、その生き物たちが来てくれるようなビオトープ造りを目指すためです。
児童は生き物を入れるカゴやバケツ、親水公園の地図を持参し、親水公園へ向かいました。



今回は授業2時間の枠の中、「公園へ向かう→生き物を探す→捕まえる→スケッチする→元の場所に返す→学校に帰る」という盛りだくさんのスケジュール内容。
二葉小学校周辺には多くの公園がある中で、今回は親水公園が探索場所として選ばれた理由としては、「ベニイトトンボ」という生き物が大きく関わっています。このベニイトトンボは、希少価値の高いもので、東京はおろかアサザ基金のみなさんのホームタウンである茨城でもまったく見ないと言われているトンボです。それが親水公園にいるらしいということ、池もあり、緑も豊富であり、生き物たちの観察にはもってこいだという理由から、親水公園に探索に行くことになりました。





この探索で、子どもはすごいと改めて感じました。みんな夢中で生き物を探しているのですが、私たちとは視点がまるで違うのです。私たち大人が必死に首を動かしていても何も発見できないのに対し、子どもたちは横でいとも簡単に次々と生き物を発見していきます。私たちには聞こえない生き物の囁きや鳴き声を聞きつけたかと思えば、木を見上げ、私たちが同じように茶色にした見えない色を見分け、生き物を探し当てるのです。
そんな中、子どもたちのお目当てはもちろん「ベニイトトンボ」。いるらしいとはいえ、実際に見ることは出来るのかな、と私自身半信半疑たっだのですが、想像していたより多くのベニイトトンボが飛んでいて、私たちはもちろん、多くの子どもたちがベニイトトンボを見ることが出来ました。ただ、ベニイトトンボの希少性の高さから、今回はベニイトトンボの捕獲はしないことにし、別の生き物を捕獲し、観察することにしました。
生き物の特徴をスケッチし、子どもたちは大満足の様子。この探索をきっかけに、トンボをはじめとする生き物への興味がさらに深まったようです。





次回は夏休み明けの9月に、ビオトープの設計図を完成させる予定。子どもたちが夏休みにどんな生き物に出会い、どんな設計図を考えてくるか楽しみです。



第3回二葉小学校訪問「観察池の設計図を完成させよう」2007年9月6日(火)

夏休みも明けて間もないこの日、第3回目の訪問となりました。今日は、観察池の設計図を完成に近づけるため、子どもたちが学年で取りまとめた設計図案の発表が行われます。二葉小学校では、総合学習の時間を利用してビオトープ造成に取り組んでおり、今回は同じ授業の中で、子ども達の夏休みの自由研究の発表も行われるとのことでした。





まずは夏休みの自由研究の発表から。「自然を守るため心がけよう生命と再利用」をテーマに、子ども達が自由研究を発表してくれました(上記写真)。トンボの体のつくりを調べたり、環境の身近な問題について調べたりとテーマも様々ですが、発表様式も様々で、大きな模造紙を使う子もいれば、紙芝居形式で発表する子もいました。みんな緊張しながらも一生懸命話している姿に、こちらもドキドキしてしまいました。

個人の研究発表が終わると、いよいよビオトープ設計図の発表です。学年でひとつにまとめ上げた設計図はどんなものになったのでしょうか。



上の写真が学年でまとめあげた設計図です。中央の土を境に、大きい生き物の住む深い池と小さい生き物の住む浅い池とに分けられています。池を分けることで、大きい生き物と小さい生き物の両方が暮らすことが出来ます。また、水草をたくさん植えることで、トンボなどが住みやすい環境になっています。 ここまではよかったのですが、問題が勃発。「ザリガニをビオトープに入れるか入れないか」で大論争となりました。子ども達は次々に手を挙げ、自分の意見を発表します。なんとも堂々たる姿。みんなにとって、これからできるビオトープやそこに住む生き物がどれだけ関心が高いか、そういう心意気が感じられる嬉しい一場面です。 ザリガニは大きな生き物の暮らす池に入れようと考えていましたが、ザリガニの性質上、他の生き物や植物などを食べてしまうようなのです。そんな飯島先生からのアドバイスを踏まえ、ザリガニの件は、10月の授業で最終決定するとのことになりました。まだまだ子どもたちの試行錯誤の日々は続きそうです。



第4回二葉小学校訪問「設計図完成!」2007年10月26日(金)

アサザ基金の飯島さんの姿を見た途端、子どもたちが嬉しそうに「飯島さーん」と声を上げました。今日はビオトープの設計図を完成させる日です。どんなビオトープを作るのか、この授業で決まるのです。

二葉小学校では、以前「観察池」として利用していた小さなプールのような場所をリニューアルする形でビオトープを造成します。「観察池」は校庭の脇にあり、子ども達がボール遊びをしても大丈夫なように、池の周辺は高さ3メートル程の金網のフェンスで囲まれています。




「絵に描くのは自由だけど、本当にやるのは別だよ」。子ども達の設計図を元に、飯島さんが黒板にビオトープの土台を書きました。それを元に、実際にやる作業を確認していくのですが、飯島さんの言うとおり、やはりいくつかの問題が出てきました。ビオトープの土台となる土が崩れるのを防ぐにはどうしたらいい?高いフェンスがあるけどどうする?等々。

これから作るのは、『生き物たちのすみか』。色々な生き物が住めるように、すみかには浅いところと深いところがあるのがいいのです。子どもたちが次々と黒板の前に来て、いいすみかを作るために思いついたことを発表します。

最大の難問は、ビオトープの周りを囲っている高さ3メートルのフェンス。せっかくビオトープを作っても、このフェンスがあってはギンヤンマなどの大きいトンボが入ってくることはできません。でもフェンスを取ってしまうと、今度はボールなどが飛び込んでビオトープが駄目になってしまう。でも子どもたちはギンヤンマを呼びたいのです。


そこで飯島さんが提案します。「一カ所だけでビオトープを完成させるより、こことつながりのある場所を他に作るのはどう?」 リニューアルする観察池以外の場所にも、例えば校舎の屋上にも生き物を呼べる環境を作れば、当然その生き物は屋上から飛び立ちフェンスのない上空からビオトープにも立ち寄っていくことでしょう(フェンスは高さが3メートルあり周りを囲っていますが、屋根はないのです!)。

ビオトープ用の土はアサザ基金、水草は他の小学校から分けてもらうことになっているのですが、それを少し多めにしてもらえばギンヤンマたちを呼び込める別の場所も作れそうです。どこにどんなものを作るかを決めるのは子どもたち。次回までの宿題になりました。



二葉小学校は隅田川のすぐ近くにあります。二葉小学校のビオトープに、周りの川や海からいろんな生き物を呼び、そしてそこがまた別のビオトープへとつながっていきます。きっと遠くから渡り鳥も来てくれるでしょう。いつの日か、もしかしたらトキも・・・? まずはこれが第一歩。次回はいよいよ実際にビオトープを作ります。



第5回二葉小学校訪問「ビオトープ造成!」2007年11月15日(木)

冬らしい澄んだ青空の中、いよいよ待ちに待ったビオトープ造成当日を向かえました。今回、二葉小学校では元々あるコンクリートでできた観察池(幅3m、奥行き1m程度)をリメイクしてビオトープを造ります。そのため今日のビオトープ造成の流れは、①土をコンクリートの池の中に入れ、②水草を植え、③水を入れ、④メダカ・タニシを放す、となっています。

4年生の総合学習の時間を利用して授業を進めているため、3クラス90名近くの子どもがこのビオトープ造成に携わっています。ただし、この90名全員で同時に作業を進めるのは難しいため、今回はクラスごとに作業を分担することにしました。まずは1組さんからビオトープの土台となるコンクリートの池に土を入れます。土は質の良い赤土を使用するため、まずは固まった土をほぐさないといけません。その土をバケツに入れる子、バケツを運ぶ子、観察池の中に土を入れて踏み固める子と、みんな自分の役割を見つけて作業します。




2組さんは引き続き土をコンクリートの観察池に入れます。限られた時間の中での作業のため、子どもたちは大慌てです。普段なかなか土いじりをしないため、みんな進んで泥だらけになっています。1組さんが入れた土の上にさらに土を加えながら、踏み固めていきます。元々は平坦な観察池でしたが、大きい生きものも小さい生きものも一緒に住めるように土で池の底部分に傾斜をつけます。
同時に、ビオトープに植える水草の準備もスタート。アサザとセリの根が絡み合っていたので、仕分け作業を行います。見たことのない植物も混ざっており、調べながら行いました。





3組さんは土の傾斜などを最終段階で整え、水草を丁寧に洗い、植えます。途中、飯島先生が茨城の石岡小学校などからもらった水草を説明してくれました。初めて見る植物ばかりで、子どもたちはとてもキラキラした目で熱心に眺めていました。





下準備が完了したところで、ビオトープに水を入れ始め、午前の作業は終了。給食の時間とお昼休みの時間を利用し、水をため込みます。ビオトープの完成を目の前に、子ども達は待ちきれない様子です。お昼を早々に食べ終え、様子を見に来る子もたくさんいました。

最後にメダカ・タニシを放し、やっとビオトープが完成。4年生全員で試行錯誤を重ねて作った設計図を基に造成したビオトープを目の前に、子どもたちの顔は達成感に満ちあふれていました。と同時に、どんな生きものがこのビオトープに来てくれるのか期待に胸を膨らませている様子です。ボランティアメンバーも子どもたちと造り上げたビオトープに大変満足しているように見受けられました。





しかし、本当のスタートはここから。これから生きものが本格的に来るのは来年です。その時に向けてビオトープをしっかり維持していかなくてはなりません。来年も一緒に子どもたちとこのビオトープを見守っていきたいと思います。