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ステークホルダーダイアログ

CSV経営の実践と当社の新たな価値創造に向けて

  • 執行役員

    渡辺 登

  • 代表取締役社長

    今関 智雄

  • 株式会社日本政策投資銀行
    執行役員 産業調査本部 副本部長

    竹ケ原 啓介

  • 司会
    コミュニケーション部長

    児玉 誠一郎

当社は「お客様と共に、社会価値向上を目指して、グローバルに挑戦するサービス・カンパニー」というグループビジョンを策定し、その実現に向けて取り組んでいます。当社が提供する価値、役割、強みを踏まえ、識者の意見を交えて経営の方向性を探りました。

ビジネスモデルの変革に取り組む中で得意分野に特化し深掘りしていく

児玉
「リースは循環型産業である」と当社が初めて提唱してから10年以上の歳月がたち、リースを取り巻く事業環境は大きく変化しています。これは、当時としては先進的な考えであったものの、現在では環境意識の高まりから、リースに限らずリユース・リサイクルの仕組みは至るところに組み込まれています。加えて、税制、会計制度の変更等もあり、制度インフラとして日本の高度成長を支えてきたリースビジネスそのものの役割も大きく変わってきました。こうした状況を踏まえ、これまで提唱してきた循環型産業という枠組みを超えて、リースや金融機能の新たな可能性について、当社として何ができるのか、探ってみたいと思います。
竹ケ原
過去の高度成長期と異なり、国内設備投資がシュリンクし、海外での生産が中心になっていく中では、国内リース取扱高の上昇は期待しにくい状況と言えるでしょう。また、日銀の異次元金融緩和政策のもと、未曾有の低金利でリース会社のみならず金融機関までもが収益モデルを模索する、深刻な市場環境にあると理解しています。おそらく、どのリース会社も海外市場への進出、他業界との業務提携、あるいは他業界への事業参入等、ビジネスモデルの変革に挑む中で、得意分野に特化し、リースの概念を超えたサービスをお考えではないかと想像しています。
今関
当社グループの場合、サービス提供型というか、お客様に対して「モノ」でなく「利用価値」で選んでいただけるビジネスを、当社らしさを持ちつつ、どう展開していくか。その具体化が将来に向けての最大の課題だと認識しています。
竹ケ原
御社の場合は、これからのデジタル化社会に向けて、NECとの強力なパートナーシップが大きな強みになってくるのではありませんか。例えば、ここ10年ほど展開してきた「PITマネージドサービス」等は、ICT資産のライフサイクル全体にわたるパッケージとして、まさに「モノ」ではなく「利用価値(サービス)」を提供するもので、御社の強みを活かした「御社らしい」ビジネスだとお見受けしています。
今関
ソフトのインストールやセッティング、セキュリティをはじめとした運用管理、そして使わなくなったら回収してデータも消去するといったパッケージは、ICT資産のサービスとして価値あるものを提供していると考えています。以前は大企業ではシステム部門がICT資産の管理をしていたため、サービスをパッケージとして導入したいというニーズは限定的でした。近年では情報システムの担当者に求められるスキルが高度化したことや、大企業でも専門要員の確保が難しくなったこと等から、大企業から中堅企業まで、改めてこのサービスの需要が高まっていると感じています。
竹ケ原
ITの高度化といった観点から、しばしば話題となるものにビッグデータがありますが、肝はその解析にあります。現状では、各社ビッグデータを収集するまでは一生懸命やっているけれど、これを分析できる機能が社内にない、あるいは不十分である、といった課題を抱えている企業が多いように思います。こうした状況はNECにとっても大きなビジネスチャンスになるのではないでしょうか。NECとの連携を通して新たな付加価値提供(マネタイズ)の可能性を考えると、御社のポジショニングには非常に優位性があると考えています。
今関
NEC自身もこれまではビッグデータを集め、それをお客様に提供できる、というところまでだったのが、ここ最近は、集めたビッグデータを使ってその分析結果をベースにお客様にソリューションを提案することを模索しています。こうしたNECの動きの中で、当社の機能がこれまでとは違う形で役に立てるのではないかと、可能性を感じています。
渡辺
現在、来期から始まる中期経営計画を作成していますが、中心になっているテーマが「モノ売り」から「コト売り」への転換です。サービス化の潮流にどう対応していくかが大きなポイントになってくるのではないでしょうか。
今関
次期中期経営計画検討の中で、当社グループビジョン実現に向けた取り組みの中核に「当社ならではのサービスの創出」を据えています。ビッグデータに限らずNECと連携し、当社としてどのようなサービスが提供できるのかを模索していきます。
竹ケ原
足もとで、リース会社各社が、サブスクリプション、リカーリング等、さまざまなサービス化を提唱していますが、「PITマネージドサービス」を通して、既に10年以上、独自の強みを持つ領域で先行されてきた御社には、そうして蓄積されたノウハウを横展開できる強みがあるのではないでしょうか。
今関
まさにご指摘のように、ICTに関連したPCやネットワーク機器だけではなく、他の商材、他のサービスに広げていこうと考えています。
竹ケ原
事業の設備投資において、省力化、自動化といったニーズに、うまくサービスを提供できるのは、やはり、御社のような、「モノ」の価値がきちんと理解できているリース会社ではないかと思っています。

官公庁・自治体ビジネスとリサビジネス

竹ケ原
私が御社の一番の強みと考えますのは、創立以来40年にわたり官公庁・自治体向けにリースをはじめとするサービスを提供されてきたという実績です。行政サービスは、本来、市場原理で提供できないものを効率よく提供するものです。それを御社が裏側から支えてこられ、収益モデルとして確立しておられる。長年御社が選ばれ続けているという事実は、御社の実践的な価値や信頼感の表れだと思います。
今関
官公庁・自治体のお客様の本質的役割は、社会課題の解決、あるいは社会価値の向上や創造だと考えています。当社は、行政の基幹システムをはじめ、ICTのリースに長年取り組み、防災や減災、防犯等、さまざまな社会価値の向上や維持を金融面から支えてきました。こうしたサポートは、すなわち社会インフラの基盤を支えていることであり、当社のCSV経営の根幹をなしています。
児玉
官公庁・自治体ビジネスと共に、地域経済の活性化というテーマでは、当社グループのリサ事業もその役割を担っていると考えています。
竹ケ原
以前、資本市場から地域活性化のための資金が流れにくくなり始めた頃、御社の子会社である株式会社リサ・パートナーズ(以下、「リサ」)から資金が投入された例をお聞きして驚いたことがありました。
渡辺
リサは全国各地で老舗旅館やホテルの事業再生に取り組んでいます。リサの強みは、金融機関が踏み込めない領域の機能を機動的に提供できるところです。投資先の強みを活かして経営の効率化や必要に応じて改装・改築を行い、いくつも再生させています。
竹ケ原
近頃、金融緩和の流れの中で、地域金融機関の従来型事業モデルが成り立たない状況で、「地方創生SDGs金融」という言葉が出てきました。リサが、いわゆる大手金融機関や地域金融機関の手が届かないところに手を伸ばし、地方創生をサポートするSDGs金融の実績を有している点に、大きな可能性を感じます。
今関
当社とリサでは対象とするお客様のグルーピング、ステージが違っていると考えています。しかしながら、NECキャピタルソリューションのブランドがリサのビジネス推進に一定程度の効果があるのではないかと感じています。
竹ケ原
まさにそのとおりだと思います。「地方創生SDGs金融」と言っても、何の面識もないよそ者がいきなり飛び込んで何かができるものでもありません。やはり、御社が長年にわたって地方公共団体と厚い信頼関係を築いてきたからこそ、地域の方々もリサを受け入れているのだと思います。

金融機関と事業会社の両面を活かし地域・産業を跨ぐプラットフォーマーへ

竹ケ原
新事業の立ち上げにも取り組まれていますが、新たな取り組み事例がありましたらご紹介ください。
今関
 「みらい共創ファーム秋田」での取り組みについてお話ししたいと思います。秋田県の八郎潟干拓地(大潟村)における高収益性農業経営モデルの構築を通して地域活性化を目指しています。米作を中核とする地域ですが、ここには減反政策によって水田として使われることなく水田放棄地となり30~40年を経た荒れ地がありました。今更水田にするという選択肢はありません。そこで、新たに地域の名産品とするべく玉ねぎを作り始めました。2018年には60ヘクタールの畑を確保して、2019年で2年目になります。今、まさに米と畑作物の複合かつ大規模農業に挑戦し始めたところです。
竹ケ原
新たな地域の名産品を育てるというのは、まさに地域経済活性化につながる取り組みですね。御社は金融面からのサポートをされるのでしょうか。
今関
そういったサポートに加え、投資対象の実態や課題を把握し、事業主体として取り組んでいきます。経営にきちんと参画したいと考え、資金だけでなく人も常勤させています。今年7月に生産した玉ねぎの出荷作業を視察に行く機会がありました。その際、高収益作物である玉ねぎの生産を始めたことがきっかけとなり、大潟村で長年懸案となっていた用水路の改良が国営事業の対象となったという話を聞きました。米作だけでは予算が下りず、このままでは米作も続けられない危機的状況だったそうで、地域の活性化につながるインフラの整備に貢献できたことを大変喜ばしく感じました。
竹ケ原
それは感慨深いお話ですね。リース会社の特性の一つは金融機関と事業会社の両方の側面を持つことです。それを活かして地域・産業を跨いだプラットフォーマーとしての機能発揮が期待されるところですね。
渡辺
金融機関は銀行法の関係で取り組みに制限がありますが、当社にもリサにもそうした制限がありません。秋田での取り組みも、前述のリサの機能も地域活性化の取り組みで当社らしさを発揮しています。今後、先ほどお話があったように、当社の官公庁・自治体向けサービスの顧客基盤を通じて、当社グループとして複合的な事業提案の機会を増やしていきたいと思います。
今関
今後は、従来型のリースを安定的な収益基盤とした上で、全ての事業で、地域の活性化といった社会課題にどう貢献し、企業としてどう成長していくか、そういった点をできるだけ明確に示していく必要があると考えています。
竹ケ原
地域金融機関の立場では、特定の事業領域に限定して深掘りすることが困難ですが、リース会社は事業領域を自ら決められる点に優位性があります。加えて御社は、官公庁・自治体との厚い信頼関係の基盤があり、NECとの連携によるビッグデータやIoT等のデジタルの強みもあります。また、リサは金融機関の手が届かないようなところまで手が届く。これらを使って、社会課題解決につながる事業開発において秋田のように実績を出されている。御社が伝統的なファイナンスリースの世界から新しい世界へ踏み出していらっしゃるのがよく分かりました。今日は新しいリース会社として進化し続ける御社の取り組みについて伺うことができ、大変有意義な時間となりました。