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特別対談(統合レポート2024)
誇りに思える会社づくりとは
〜カルチャー変革2年目、人事領域の挑戦〜

「変革と挑戦」を追求する中期計画2025始動に際し、事業戦略に即する形で「カルチャー変革&人事中計」を策定しました。その策定背景やその後の進捗等について、人事担当である柴田執行役員と、人事領域に造詣が深い萩原社外取締役が、さまざまな角度から意見を交わしました。
経営戦略と連動した「カルチャー変革&人事中計」が2年目に突入
- 柴田
- 昨年「カルチャー変革&人事中計」を策定した際に、最も重視したのは経営戦略との連動でした。新グループビジョンのもとでの中期計画2025スタートのタイミングで、それに合わせて人事施策や組織文化をどのように変えるべきかを念頭に、中期計画策定プロジェクトメンバーとも協議しながら策定しました。これまでの当社社員は仕事やお客様に対してとても誠実である反面、変化や挑戦に慎重なきらいがありました。事業自体が大きく変革を求められる中、会社だけでなく社員一人ひとりの変革が求められています。今後、何が課題であるかを一人ひとりが捉えて主体的に動くカルチャーへと変革すべく、新たな行動基準の制定等多様な取り組みを進めているところです。
- 萩原
- 着実・誠実に仕事をこなすことは、この業種の中では信頼性の根幹であり、会社のコアの力でもあると思います。カルチャーを変えていく時には、ここを絶対的に不変のものとしながら、リスクテイクし、新しい変化や挑戦を許容するようなカルチャーへ大胆に発展させていくということですね。
- 柴田
- そのとおりです。正に信頼は、当社のキーワードだと思っています。お客様との間だけではなく社内においてもお互いを信頼・尊重し合う良い意味での仲間意識の高さという当社の特徴につながっていると考えています。
- 萩原
- 当社では社長をはじめとした役員との対話会を重ねられ、昨年11月の創立記念日には全社員を集めた創立45周年イベントを行いました。このような活動は実際に社員の変化につながっていると思いますか。
- 柴田
- 非常につながっていると思います。役員自らが直接メッセージを繰り返し発信する対話会はもちろんのこと、創立45周年イベントも、これまでなかなか分からなかった仲間の仕事内容や活躍ぶりを知ることができる絶好の機会となりました。
- 萩原
- 私もイベントに参加させていただきましたが、活躍されている若手の方々が自分の言葉で会社を非常に誇らしげに説明してくださる姿を目の当たりにし、組織の活気を実感しました。
D&Iや人材活躍のために「心理的安全性」が担保された組織環境
- 柴田
- 2024年7月に、昨年入社した新入社員の成果発表会を行いました。その中で特徴的だったのは、過去に先輩たちがうまくいかなかった案件に改めて挑戦し、成果に結びついた事例がいくつかあったことです。経験がないことが逆に強みになっており、これは一種の多様性の力ではないかと思っています。
- 萩原
- 過去にとらわれずに再挑戦を許容し、それを成果につながるようサポートする先輩方がいる組織は強いですね。私も先日の懇親会の際、幹部の方が社員の成長を愛おしく表現されていて、社員に対する愛情や信頼感を持っていらっしゃることを感じました。新人の方々が成長されているということは、「心理的安全性」が担保された組織環境の中で自分の力を発揮できた1年間であったのですね。
- 柴田
- そうですね。そしてこの1年間の各人の成長を、幹部もしっかりと認知し本人に伝えています。
- 萩原
- 今おっしゃった「認知」という点は大切です。幹部自らが社員の行ってきたことを認知し、言葉にしてコミュニケーションすることは、D&I(Diversity & Inclusion)を広げていく上での根幹になると考えています。そういう意味では、当社の中でいろいろなものが少しずつ花開いている姿を頼もしく見ています。一方、課題は女性の活躍推進ですね。時間が掛かる取り組みですが、本来であればもっと高い目標を掲げるべきでしょう。女性活躍の推進についてはどのようにお考えですか。
- 柴田
- 各部門を巻き込みながら、計画的な育成に取り組んでいます。また、「心理的安全性」のお話も先ほどありましたが、アンコンシャス・バイアスの研修を2年連続で実施し、無意識のうちに「女性はこのようなことを望んでいるだろう」と思い込み、配慮した結果として女性の挑戦や成長の機会を奪ってしまうことがないような環境づくりに留意しています。人事部門としては、キャリアや育児・介護等に関する相談を受け、各職場に働きかけて解決していけるよう努めています。各職場と人事部門の垣根が低く、気軽に具体的相談ができる環境にあるのも、当社の一つの特徴と言えるかもしれません。
小さな打ち手を着実に積み重ねエンゲージメント向上につなげる
- 柴田
- 当社では2022年度からエンゲージメント測定を開始しました。その結果を受けて、役員対話会の実施、及び多様な働き方のニーズに対応するためのテレワークやコアタイムのないフレックスタイム制度の導入による時間的・場所的制約の撤廃、LGBTQ+に対応した規程改定等に取り組みました。そして1年後の2023年度サーベイでは、総合スコア自体にほとんど変化はなかったものの、エンゲージメント項目別にみるとポジティブな回答の社員の割合が、ほぼすべての項目において向上しました。これは1年間の取り組みにおける成果とも言え、今の方向で進めていけば、総合スコアの向上も伴うだろうと一定の手応えを感じています。
- 萩原
- 人事施策を打っても、それが社員に浸透し理解されるまでに時間差が出るのが一般的ですが、当社はコミュニケーションを積極的に図ることによって、短期間で結果を出すことができていますね。次なる打ち手に関しては、どのような問題意識をお持ちでしょうか。

柴田
制度・施策を導入して終わるのではなく、実効につながる現場マネジメントへの支援策の実行等、変化を促すフォロー施策を継続していくことの積み重ねが必要と考えています。同時に、これからどのようなカルチャー変革を目指すのか、当社をどのような会社にしようとしているのかといった本質的なところまで共感を得て、皆さんの気持ちを同じベクトルに変えていくことも重要と捉えています。
萩原
私は、カルチャーの変革度合いを測る上で、このエンゲージメントが一つの指標になると思い、大変注目しているところです。当社では、エンゲージメント結果が役員報酬の算定の中に盛り込まれており、これからも幹部自らが直接的に向き合うべき課題として取り組んでいかれることを期待しています。
これからの変化と成長に向けたプロフェッショナル人材とリーダーの育成・発掘
- 萩原
- 冒頭のお話にあった変化を起こす人材に加え、今後、企業価値向上に結びつくような人材戦略の肝はどこにあるとお考えですか。
- 柴田
- 当社がこれから成長させていきたい領域の一つに、金融の専門的領域があり、金融に関するプロフェッショナルの計画的育成が大きな課題と考えています。金融プロフェッショナルに挑戦したい社員を関連業務にアサインする仕組みや、金融プロフェッショナルを志望する社員の成長を促進するためのプログラムづくり等が、今後必要になってくるとも考えています。
- 萩原
- このような専門領域になると、経験者の外部からの採用も視野に入るだろうと思われます。既存社員のリテンションに向けてはもちろんのこと、外部から見ても魅力的な職場づくりという点ではいかがお考えでしょうか。
- 柴田
- 当社に入ってさらに自分が成長できる、あるいはさらにプロフェッショナルになれる環境づくりという点を、より意識せねばと感じています。足もとでは、営業部門の組織編成を見直し、育成を強化しています。具体的には、金融の専門部隊と他の営業部門との連携を強化し、多くの営業担当が金融の専門領域への知見が獲得できる体制としました。また、事業領域の拡大に合わせて面白い仕事が増えていることを社内外へ積極的にアピールし、会社の成長と個人の成長とがうまく同期できるような、そのような仕組みを作っていきたいと考えています。
- 萩原
- 当社のこれからの変革と成長ということを考えると、それをリードしていく幹部の方々のより良い、より高みへ向けての成長や、それを可能にする人材の発掘・育成・登用も重要かと思います。その辺りの仕組みづくりはいかがですか。

柴田
当社では2022年度からサクセッションプランを導入しました。その中では、現在の幹部間で将来の幹部候補一人ひとりの成長課題までも共有しながら、対話や研修・育成を図っています。また年に1回、成長状況を確認し合い、次は今まで経験のない領域を担当させようとか、あるいは、もう十分育ってきているので早く大きな役割につけようとか、そういった議論をしながら次世代幹部の育成を進めている最中です。
萩原
私も指名・報酬委員として次世代幹部の方々と会う機会を作っていただいており、これからも是非コミュニケーションを続け、次世代幹部の育成に貢献していけたらと考えています。
「カルチャー変革&人事中計」の先に目指す「誇りに思える会社づくり」へ
- 萩原
- 先ほど柴田執行役員からもお話があったように、人事諸施策を展開しているだけでは、本来大切にすべき本質的部分は社員に伝わりません。諸施策の展開と共に、社会への貢献を継続して果たすことが一つの大きなメッセージとなり、社員それぞれの中でこの会社は誇らしい会社であるという想いが醸成されてくると考えます。またそれは、会社のカルチャーの強さにもなると思うのです。現在、会社のカルチャーの素地はどんどん耕され、これからたくましく変化や挑戦を受容する会社に育っていくであろうと心強く感じているところであります。
- 柴田
- 誇りに思える会社とは、例えばふとした時に「社会に役立つ凄い仕事をしている会社だなぁ」と思ったり、友人や家族に会社の話をした時に「良い会社だね」と言われたりするような、体で感じるもの、感覚的なものだと私は思っています。日常の感覚として、「この会社にいて良かった」「この会社と目指す方向性を共有できている」と社員の皆さんに思ってもらえるような、そのような会社像を大切にしていきたいと考えています。その実現に向けてさまざまな人事施策を展開している訳ですが、人材やカルチャーが変化したことによる具体的リターンが創出されるまでには相応の時間を要します。先ほど、萩原社外取締役からカルチャーを測るKPIとしてエンゲージメントスコアを挙げていただきましたが、人材への投資と企業価値向上の相関関係を短期的に数値で捉えるのは簡単ではありません。そのため、グループビジョンのターゲットである2030年を目指して、これからもカルチャー変革や人的資本の多様化・強化につながるさまざまな施策に継続的に取り組み、その先の姿・成果として、誇りに思える会社づくり、また、企業価値の向上を果たしていきたいと考えています。