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特別鼎談(統合レポート2023)

「次世代循環型社会」の実現に向けて当社が果たすべき役割

  • 一橋ビジネススクール国際企業戦略専攻教授
    NECキャピタルソリューション株式会社
    社外取締役

    名和 高司

  • NECキャピタルソリューション株式会社
    代表取締役社長

    菅沼 正明

  • NECキャピタルソリューション株式会社
    代表取締役、執行役員副社長

    木崎 雅満

グループビジョン2030がいよいよ始動する中、当社が次世代循環型社会を目指す主旨、またこれからの当社のCSV経営の在り方等について、一橋ビジネススクール国際企業戦略専攻教授であり、『CSV経営戦略』『パーパス経営』等の著書をお持ちの名和高司氏(当社社外取締役)をお招きし、社長の菅沼、副社長の木崎の三者で議論しました。( 鼎談実施日:2023年6月)

前グループビジョンの振り返り
「CSVへ先進的かつ具体的に取り組まれてきた点を高く評価しています」(名和氏)

菅沼
2013年度から始動した前グループビジョンでは、リース会社からキャピタルソリューションを提供する会社への転換を加速し、社会課題解決を視野に入れたCSV経営の実現を進めてまいりました。この期間を通じて、CSV経営に対する理解や共感が社員の中にしっかりと醸成され、再生可能エネルギーやヘルスケア分野等で新たな取り組みに着手し収益化への道筋をつけることができました。この他にもさまざまな社会課題に対して、我々のキャピタルソリューションを繋げながら、CSV経営というものをより意識して作り込むことができた10年間であったと考えています。
木崎
CSV経営が今のように一般的ではなかった10年前からそれに着手し、この10年間でCSV経営を実践する体制を整備できたことは、今や同業他社に対して大きなアドバンテージとなっています。社会価値向上に向けた事業領域の拡大に関しても、ベンダーファイナンスやICT関連サービス、金融プロダクトと一定の成果を出せています。また計数面に関しては、営業資産の着実な積み上げと共に3カ年の利益計画を達成し、自己資本1,000億円超・自己資本比率10%超というターゲットについてもクリアすることができました。前グループビジョンを策定した10年前と比較すれば収益レベルは格段に上がっており、次の飛躍に向けた礎を築くことができた10年間であったと総括しています。
名和
前グループビジョンの策定当時、私もその一員として参画していました。そうしたご縁もあって、現在まで社外取締役を務めさせていただいています。当社はSDGs採択前という世界的に見ても早い段階から、CSVをパーパスとして高らかに掲げていて、逆に今や世界がそこに追いついてきている状況とも言えます。そのような当社の先進性、またそれを美辞麗句に終わらせることなく、環境面・社会面といった具体的事業として実践していることを私は高く評価しています。一方で、パーパスを各組織に則した形で組み換えながら、バックオフィスを含めた社員一人ひとりがマイ・パーパスとして自分事化できていたか、かつそれが新規のみならず従来型事業においても行えていたかという点を、今回の新ビジョン実現の成否にも通ずる課題点として挙げたいと思います。

グループビジョン2030について
「グループビジョン2030には大きく2つの想い・こだわりを込めました」(菅沼社長)

菅沼
このたび当社では8年後のありたい姿として、グループビジョン2030「次世代循環型社会をリードするSolution Company」を打ち出した訳ですが、そこには大きく2つの想い・こだわりを込めています。
1点目が、「次世代循環型社会を目指した会社になる」という想い・こだわりです。創業の原点であるリースは、返却された機器を適正に3R※処理することまでを事業として実現できる、正に循環型のビジネスです。当社は2000年初頭から環境に配慮した3R処理に対応しており、リースを通じた循環型サービスについて蓄積してきた知見は当社の大きな強みの一つと考えています。また今後、SDGs達成や生物多様性の確保等、地球環境維持のために資源を循環利用し続ける世界の到来が予測されます。当社はこれを「次世代循環型社会」と名付け、こうした予測の下、元来の強みをもとに循環をキーワードに社会課題の解決に向けて価値を発揮し、貢献していくことを目指します。
2点目が、「Solution Company」になるという想い・こだわりです。これからの社会課題を解決していくためのSolutionを提供する会社、という意味に加え、Companyには価値観を共有する仲間という意味を込めました。このような想いのもと、次世代循環型社会に向けた課題解決に対し従業員のエンゲージメントの向上を図りながら取り組んでいきたいと考えています。
尚、次世代循環型社会の具体的姿について問われることがありますが、現時点では敢えてキーワード的な表現に留めています。当社が自律的に世の中の変化を感じながら、金融ソリューションを核としたプラスアルファ領域を拡大してきたのと同様に、最前線のメンバーにおいても市場変化を自律的に捉え、それに対応したソリューションを作っていく人材となって欲しい。このような期待感を込め、敢えて抽象的な表現にしていることを付け加えておきます。


※3R: 廃棄物等の発生抑制(Reduce)、再使用(Reuse)、再生利用(Recycle)の頭文字をとったもの。資源の有効活用と廃棄物抑制を通して環境への負荷を軽減する取り組み。

木崎
グループビジョン2030は、当社の存在意義と世の中の長期的な動き、この2つの観点から当社の強みを見極め、導き出したものでもあります。
策定に向けた議論で最初の議題となったのは、今後のメガトレンドでした。この観点では、2030年にゴールを控える全世界の共通目標であるSDGsと、当社のCSV経営とが非常に親和性が高いことに注目し、今回のグループビジョンのゴールをSDGsと同じく2030年に設定することとしました。当社として2030年の社会として予測したのは、フィジカル空間とサイバー空間が高度に融合されたCPS(Cyber-Physical System)社会というものでした。業界の中でも、当社がCPS社会に最も近い距離にあるという強みを活かすことも踏まえ、グループビジョン2030の具体的な作り込みを進めてきました。
加えて、これら経緯の中でグループビジョン2030のポイントの一つとなったのが、菅沼からも話のあった「Company=価値観を共有した仲間」という思想の落とし込みでした。会社がなりたい姿と社員一人ひとりがなりたい姿をとにかく重ね合わせたい、という我々経営陣の非常に強い想いから、このような擬人的表現を盛り込んだ次第です。この価値観の共有こそが、グループビジョン2030達成に向けたキーとも言え、その共有・浸透を従業員エンゲージメントの向上や人的資本の強化へ繋げていきたいと考えています。

名和
最近サーキュラーエコノミーという言葉が使われているように、いわゆる循環型というのは、古くて新しい概念だと私は考えています。今般の新グループビジョンでは、それを次世代型に進化させ、さらに次世代循環型社会をリードしながら当社自身も進化していく、という経営の強い意志が表れている点に、とても感心しています。私なりの解釈・表現で申し上げれば、当社はCSV経営2.0にバージョンアップしたのではないでしょうか。その上で、繰り返しにはなりますが冒頭でも申し上げたように、社員の皆さんが自信を持ってグループビジョン2030に突き進んでいけるよう、また従来型事業が置き去りにならぬよう、包括的な人的資本の強化に努めてもらうことを願っています。

2030年に向けたロードマップについて
「新たなマネジメントアプローチのもとでレジリエントに戦略を練っていきたいと考えています」(木崎副社長)

菅沼
あくまでもこれは現時点で私個人のイメージですが、当社がこれからの一連の取り組みを経て2030年を迎えた際、ヘルスケアや太陽光の分野で困りごとがあれば、当社にコンタクトしてみようと思ってもらえるような、当社ならではのエッジの効いた会社になりたいと考えています。
また当社は、官公庁・自治体に非常に大きいアセットを持っています。こうした強みをもとに、今後2030年に向けてはコンピュータ機器の運用まで担うといったような、プラスアルファのサービス拡大に努めていきたいと考えています。さらにその中で、インフラの老朽化を迎えPFIやPPPを検討する自治体に対して積極的に提案する等、官公庁・自治体の運営に関するサービスを多面的に提供し、深くお付き合いできる環境づくりに努めていきます。そうした動きがある意味、社会的な貢献になり、公共インフラの循環を支えることにもなると捉えています。

木崎
2023-2025年度の現中期計画がスタートしたばかりで、2026-2030年度の次期中期計画はいまだ粗いデザインとなっているものの、現中期計画では次期中期計画に繋がるためのこだわりを幾つか盛り込んでいます。
中でも私が最も重視しているのは、事業のマトリックス戦略の導入です。大まかな仕組みとしてこれは、リース事業/ファイナンス事業/インベストメント事業/その他の事業(サービス事業)という事業セグメント4軸と、ベンダーファイナンス/ICT・専門サービス/顧客営業/金融プロダクトという当社が持つキャピタルソリューション4軸を新たに組み合わせたものです。これにより各組織及び各責任者並びに各人においては、中期計画目標に対するそれぞれの現在地・進捗度合いを適宜精緻なレベルで確認することができます。また同時に、目標達成のための戦略をレジリエントに立案・遂行できるようにもなりました。まずはこれからの向こう3年間、この新たなマネジメントアプローチによってPCDAを常に細かく回していきながら、2025年度の経営目標達成を目指していきます。そして、現中期計画の進捗状況や最終的な創出成果を踏まえた上で、あらためてその先の次期中期計画をレジリエントに構築していきたいと考えています。

名和
現在多くの民間企業では、本来企業価値を生むアセットの抱え込みがPBRに支障をきたすという矛盾に苦慮しています。こうした民間企業の悩みに寄り添い、有形資産から無形資産へのAX(アセットトランスフォーメーション)を支える企業として一旦アセットを預かり、進化の道を伴走する当社の立ち位置をとても頼もしく見ています。即ち当社が生業とするリース業は、正に循環型ビジネスとしてアセットの組み替えにも非常にマッチしており、今後のさらなる役割発揮を期待しています。また自治体に対しては、パブリックとプライベートの力が融合するPPP・PFIへの取り組みが、今後当社にとってポイントになってくるであろうと考えています。当社は、前グループビジョンのもとで取り組みを開始した観光等の事業において、単に出資を行うだけではなく、観光と地域活性化の両側面から取り組んできました。こうした当社の強みを背景に、地域のお悩み相談を一旦丸ごと引き受けて、その中で当社ができること、採り入れていくこと等が話せる共創型組織になっていくことを期待しています。

今後の持続的成長へ向けて

名和
座談会の最後に、NECとの関係性について私見を述べさせていただきます。ざっくばらんに申し上げて、NECとの関係抜きでは、当社は他の一般的なリース会社と同じ立ち位置になってしまうのが現実ではないかと思われます。NECはセキュリティ市場で世界No. 1の評価を受けるグローバル企業であり、当社にはNECのブランドをうまく活用し、これからのさらなる高度情報社会においても「安全・安心」を提供できることを広くアピールしてもらえたらと考えます。また、先に木崎副社長が触れられていたCPS的な部分については金融というソリューションを使いながら、むしろNECを先導するくらいの形で進め、信頼ある良きパートナーシップを構築されることを期待しています。
木崎
先に名和先生から社員へのパーパス浸透の重要性の課題提起がありました。今回の新ビジョン制定にあたり当社では、パーパスとも言える企業理念、ビジョンそしてプリンシプルを三位一体で策定しました。グループビジョン2030では少し遠い世界のことを言っている部分もあり、この三層で捉えてもらうことで、当ビジョンを全社員により身近なものとしてもらいたいと考えています。非常に高い志となっている今回の新ビジョン実践に向け、掲げた経営目標は決して容易なものではないことを重々認識するものの、反面これを完遂できた暁には、業界における当社のプレゼンスを飛躍的に高めることができるものと考えています。当社が主導する形で新たな社会価値を生み出し、それをさらに次の飛躍に繋げていくという好循環を当社自身が享受できるよう、中期計画2025をはじめとするあらゆる諸施策の着実な遂行に邁進していきたいと考えています。

菅沼
私が中期計画やビジョンを通じて最も作りたいもの、それは文化です。木崎から話の出たプリンシプルもそこに含まれるものです。先ほども申し上げたように、これから当社を、変化に対して自律的に対応できる会社としていく上では、それに相応しい文化が必要不可欠であり、これから長期的にその文化づくりを意識して進めていきたいと思っています。またその過程においては、併せて社員とのコミュニケーションを図り、経営の最重要テーマでもある働きがいを育むことができる会社にしてまいりたいとも考えています。
先ほど、名和先生からもCSV経営2.0というお言葉をいただきましたが、当社は2030年のありたい姿へ向けて、新たな経営ステージへと突入しました。木崎も申し上げたとおり、新たに掲げたビジョンは非常に志高いものとなっていますが、過去の当社実績を振り返れば可能な目標であることを、全社員を対象とした対話会キャラバン等を通じて共有化を図っています。これからの当社の展開、進化と成長の姿にご期待ください。