次世代循環型社会のソリューションを
中期計画を通して具体化していきます。
代表取締役社長
菅沼 正明
NECキャピタルソリューション
代表取締役社長
菅沼 正明
当社は現在、2025年度に向けた3カ年中期計画を推進中です。本計画が目指すのは、次世代循環型社会の実現に向けて、収益性と従業員エンゲージメントを高めながら、当社らしい循環型サービスを創出すること。その取り組みの進捗と今後の展開についてインタビューしました。
CSV経営の実践を通じて社会に貢献する当社の取り組みは、近年の社会情勢や経済環境の変化を受け、価値提供の幅をますます拡げています。その中で私たちは、世の中の課題を解決し、豊かさを支える当社の存在意義とミッションの重要性を再認識しています。
この1年は、円安の進行と共に資源・エネルギーの高騰や資機材価格の上昇が続き、コスト環境の悪化が進んだことから、金融関連市場では、資金の効率化を求める企業のニーズがさらに高まりました。また、労働人口の減少による人手不足が多くの業界で深刻化し、長時間労働を抑制する動きも相俟って、業務効率の改善や省人化に向けた設備投資・DX投資が増加しています。
そしてカーボンニュートラルの達成に向けた取り組みは、今や産業界全体に拡がり、サーキュラーエコノミーを志向するリサイクル品・リユース品の利用も企業の間でますます大きな動きになってきました。
当社は、こうした次世代循環型社会への流れを早期に捉え、将来展望を描いてきました。リース業は元来、資源の再利用や効率性向上により環境負荷の低減に寄与し、循環型社会の形成に直接的に資するビジネスですが、そこにプラスアルファのサービスを加えた価値提供へのニーズが高まり、私たちにとってさらなる成長機会につながる拡がりをもたらしています。
2030年におけるグループ事業のあるべき姿を定め、中長期的な成長の方向性を示した「グループビジョン2030」は、「次世代循環型社会をリードするSolution Company」を掲げています。私たちは、お客様の経営資源を中心とする幅広い経営課題に対して解決策を提供する「キャピタルソリューション」の革新を図り、これからの世の中が必要とする循環型サービスを創出・提供していくことで、自らの企業価値を高めてまいります。
私は、2年前の社長就任以来「収益性の向上」と「従業員エンゲージメントの向上」の2つを最も重要な経営課題と位置付け、継続的な取り組みを行っています。
ROEに見る当社の収益性(資本効率)は、2023年度の実績で6.2%にとどまっており、プライム市場上場企業の中では低位にあります。要因の一つとして、当社が長年にわたり、資産の積み上げに主眼を置いた営業活動意識が強かったことから、結果的に収益改善に遅れが出たことが挙げられます。
近年、東京証券取引所から上場企業に対して「資本コストや株価を意識した経営」が求められる等、株式市場では収益性向上への取り組みを期待する声が高まり、当社においても対応強化の必要性を認識しています。具体的には、現在推進中の「中期計画2025」の最終年度目標に「ROE 8%」を掲げていますが、これは最低限の水準と捉えており、その達成を通過点として、さらなる収益性の向上を目指します。
当社は、収益性を高める取り組みとして、リースにおける料率の改善やプラスアルファのサービス付加による利益獲得を図っています。さらに金融ソリューション分野における取り組みを積極化し、一定のリスクを取りながら、従来以上のリターンが期待できるビジネスを展開しています。こうした取り組みを進めるためには、リスクマネジメントの強化が必須であり、そのノウハウを蓄積してリスクの低減につなげていくことが今後の課題です。
リース事業は安定的な収益源であり、そのベース収益の上で、ファイナンス事業とインベストメント事業が利益のアップサイドを稼いでいます。そのため現在は、営業資産残高の6割、営業利益の4割強をリース事業が占めていますが、将来的には営業利益の割合をリース事業、ファイナンス事業、インベストメント事業でほぼ1/3ずつとする収益構造を目指し、事業ポートフォリオを変革していく考えです。
もう一つの経営課題である「従業員エンゲージメントの向上」については、アンケート調査に基づく2023年度のエンゲージメントスコアが21%となっており、やはり高い水準とは言えない状況です。
従業員エンゲージメントを重視する私の方針は、当社の従業員であることを誇りとし、当社で働くことを楽しんでほしいという想いがベースにあります。統計上のデータとして、エンゲージメントと利益の相関も見られますので、楽しく誇りを持って働ける職場であることが、業務効率の改善や優れたアイディアの発想等を通じて業績に資するといった、副次的な効果も期待できるでしょう。金融事業は、人と人との信頼関係に根差し、人が価値を作り出すビジネスです。人材の活躍と成長を企業価値につなげていく人的資本経営の観点からも、従業員エンゲージメントを重視すべきと考えます。
社長による対話会の様子
エンゲージメントスコアの改善に向けた施策の一つとして、私を含む経営陣4名と全従業員の「対話会」を実施しています。2023年度は部署ごとに実施しました。2024年度は職位ごとに集まってもらった従業員と直に話し、会社が目指す方向性や変化へのチャレンジについて伝え、意見や質問、要望を受けて相互に理解を深める場としており、この取り組みを継続することで、「人」という大切な資産を形成していきます。
「中期計画2025」を始動した2023年度は、営業利益はほぼ前年度並みとなりましたが、最終利益は9.6%の増加となり、過去最高の70億円に達しました。営業活動は順調に進み、営業資産残高9,825億円(前期比164億円増)を確保した一方、前年度の大型資産売却や与信関連費用の計上等により、期初の計画値を下回りました。引き続き中期計画の事業戦略に基づく取り組みを確実に遂行し、新たなサービスの構築を進めつつ、リスクマネジメントの強化を図り、収益改善につなげていきます。
本計画は、次世代循環型社会に向けた進化に挑戦する最初の3年間であり、循環型サービスの創出をメインテーマとしています。私たちは、お客様と取引先様、株主・投資家の皆さま、そして進化に挑戦する主体である従業員に対して、「次世代循環型社会のソリューション」が具体的にどのようなものなのか、本計画においてしっかり示していく必要があります。
当社事業を取り巻く市場では、再生可能エネルギーの導入における管理・運用サービス、老朽化インフラや地方の再生に関わるPFI活用、LBOローン※による資金効率向上のスキーム、リファービッシュPC等資産の再生利用といった形で、循環型サービスによる価値提供が求められる機会が拡がっています。こうしたニーズに応えるソリューションは、環境・社会の持続可能性を高めるとともに、当社の成長戦略においても、より高い収益をもたらすものとして期待できます。
2030年の未来に向けて、循環型サービスによる経済価値・社会価値の成果を刈り取ることができるように、本計画を通じてニーズを的確に捉え、ソリューションとしての具体化を着実に進めていく方針です。
※ LBOローン:LBOはLeveraged Buyoutの頭文字を取ったもの。M&Aにおいて、組成、引受、アレンジメントと共に、買収資金自体の融資を行う。
「中期計画2025」は、事業戦略として「サービス事業の拡大、新たな循環型サービスを創出」「注力事業への戦略的投資による成長加速」「ベンダーファイナンスの強化及び顧客基盤拡充」の3つを推進しています。
サービス事業については、太陽光発電やPFI案件、ヘルスケア施設のウェアハウジング(一時保有)、コーポレートアドバイザリーによる事業承継支援等、非金融領域において核となる事業がそれぞれ順調に拡大しました。事業の専門性を高めることもさることながら、パートナーとの連携強化が進展し取り組み領域に広がりを持たせることができました。今後、プライマリー(元請)としてサービスを運営すべく、リスクマネジメントを強化し、展開を拡げていきます。
注力事業への戦略投資は、資産管理を付加したICT関連リースが伸長した他、金融プロダクトではLBOファイナンスやエクイティ投資への領域拡大が成果を上げ、キャピタルゲインを得ながら資産を入れ替える取り組みが奏功し、収益向上に寄与しました。また、ローンのお客様にアセット活用を提案する取り組みの深耕が奏功しています。リサ・パートナーズは、大型のインカムゲインアセットを取得し、キャピタルゲインに依らない収益安定化が進展しました。
ベンダーファイナンスにおいては、官公庁・自治体の大型案件の獲得によりボリューム拡大と優良アセットへの入れ替えを進めつつ、ベンダーと連携したクラウドサービスのサブスクリプションモデル等、新たな領域での収益獲得に取り組み、成果を上げています。
計画2年目の2024年度は、金利の上昇や原材料費の高騰等コスト環境の悪化を受け、企業倒産件数の増加が予想される中で、しっかりしたリスク管理を維持しつつ、さらなる収益拡大を目指す年になります。特に優良アセットへの入れ替えや、プラスアルファのサービス付加による収益獲得は、業績改善のポイントとなるでしょう。計画最終年度(2025年度)目標の「当期純利益100億円」「ROE 8%」に向けて、収益力強化を加速していきます。
2023年度の年間配当額は、最終利益の増加を反映し、1株当たり130円(中間・期末とも65円、前年比20円増配)とさせていただきました。2024年度は、増益予想を前提として年間配当額1株当たり150円(中間・期末とも75円、前年比20円増配)を予定しています。
収益力向上を目指す当社は、従来以上のリターンが期待できるビジネスを進めるべく、そのリスクに備えた資本を保持しなければならないと認識しています。同時に、次世代循環型社会のソリューションを形にするために、必要に応じて成長投資を実行していく必要があります。今後は、こうしたビジネスモデルの変化に合わせて、一定の内部留保を確保しつつ、引き続き株主の皆さまへの利益還元を拡充できるよう、一層の業績改善に努めてまいります。
私たちは、時代の変化を捉えた提案と価値提供により、お客様やベンダー各社をはじめとするお取引先様の成長に寄与し、強固な信頼関係を築いていきます。さらにその取り組みを通じて、環境・社会の持続可能性を高め、豊かな未来づくりに貢献し、信頼の輪を大きく拡げていきたいと考えています。
最後になりますが、2024年7月に主要株主等の異動を公表しました。2024年10月にNEC及び三井住友ファイナンス&リース株式会社の保有株式の一部が株式会社SBI新生銀行に譲渡され、当社の筆頭株主がSBI新生銀行となる予定です。NECグループとの協働関係は維持しつつ、SBI新生銀行グループとの新たな連携を通じて中長期的な事業成長及び収益性向上につながるものと考えています。これからもNECキャピタルソリューショングループへの長期的なご支援を賜りますようお願い申し上げます。